保育士さんの中には、栄養満点でおいしい食事を食べることができる給食の時間を楽しみにしている方も多いのではないでしょうか。でも、「子どもが給食を食べない」「おしゃべりに夢中になって、お昼寝の時間に間に合わない」ということが起こると、一気に気が重い時間になってしまうことも…。そこで今回は、給食の時間を子どもも保育士も楽しく過ごすために「子どもが給食を食べない」時の理由と対応を考えていきたいと思います。
子どもが給食を食べない理由
- メニューや食材が苦手
- おなかがすいていない
- 量が多すぎる
- 集中できる時間を超えている
- 食器や机が合っていない
- 食材のサイズが大きすぎる
- 給食時の雰囲気が悪い
- 食に興味がない
- 偏食
それでは、それぞれの理由を詳しくみていきましょう。
①メニューや食材が苦手
日によって食べる量やペースがまちまち…そんな子は、その日のメニューや食材が苦手なのかもしれません。よそう時に苦手なものは少なめにしたり、配膳後に目の前で苦手なものをよけてあげたり。「これだったら頑張れる!」という気持ちにつなげられたらいいですね。
②おなかがすいていない
午前中にどれくらいの活動量がありましたか?戸外で思い切り走り回った日と、ずっと室内で座って過ごした日とではおなかの減り具合も違いますよね。活動量が少なかった日は、配膳の量を減らしたり、残すのもオッケーにしてみるなど、量を調整することで無理のない給食の時間になるかもしれないですね。もちろん、午前中に運動量の多い活動を入れるのも効果的です。
③量が多すぎる
毎日全量を食べられない場合は、その子にとってそもそもの配膳量が多いのかもしれません。体格差はもちろん、体が大きい子でもあまり食べない子もいます。「出された分を完食すること」が必ずしもいいこととは限りません。一人ひとりに合わせた量を提供できるといいですね。
④集中できる時間を超えている
例えば、1歳児に「60分集中しなさい」というのは酷なものです。「決まった量を食べさせなくては」という大人の思いから全部食べきるまでイスに座らせても、時間が経てば経つほど子どもの集中は切れ、遊び食べになったり眠ってしまったり…。集中の続く時間を見極め、「20分経ったら完食していなくても食事はおしまい」とするなどメリハリをつけることも大切です。もしかすると、「おしまい」と言われると逆に「食べる!」と言う子もいるかもしれません。そうなったら「長い針が3になったらごちそうさましようね」など「おしまい」の目安を伝え、再び食事に集中できるようにしてあげるといいですね。
⑤食器や机が合っていない
今使っているスプーンやコップを使いにくそうにしていませんか?イスと机の高さは体に合っていますか?おなかがすいていても、食べたいという気持ちがあったとしても、食器が扱いにくかったり机が食べにくい高さだったりしたら食べにくくて、次第に食べる意欲もなくなってしまいますよね。特に机の高さは姿勢が悪くなって猫背になってしまったり体幹が弱くなってしまったりすることがあるので、しっかり調節してあげたいですね。また体の小さな子で足が床についていない場合も集中が切れやすくなるので、牛乳パックなどで踏み台を作ってあげるといいですよ。スプーンをよく落とすなら持ち手が太いものにしてみる、コップは持ち手があるものにしてみるなど、「何がどう使いにくいのか」ということをよくみて、「じゃあどうすればよいのか」を考えてみてください。
⑥食材のサイズが大きすぎる
特に乳児さんでよくみられます。好きなメニューや食材でも大きくて口の中がいっぱいになってしまうサイズだと、口が疲れたり圧迫感から食べたがらない場合もあります。キッチンバサミを用意しておいて、食べにくそうにしていたらその場で食べやすい大きさに切ってあげるとぱくぱくと食べ始めるかもしれません。
⑦給食時の雰囲気が悪い
給食時の雰囲気が悪いと委縮してしまって食べられなくなってしまいます。大人でも、食事のマナーを細かくチェック・指摘されたら食欲がなくなりますよね。おかずを少し床に落としただけで「あー!もー!何やってるの!」と怒られたり、事細かにお箸やスプーンの持ち方を指摘されたりして給食の時間をしんどいなと感じさせてしまうと、箸が進まなくなることもあります。子どもたちは楽しい給食の時間を過ごす中で、食への意欲やマナーが育っていきます。乳幼児はまだまだこぼしたり箸の持ち方が未熟だったりして当然というおおらかな心持ちで、楽しい雰囲気の中で少しずつマナーなどを伝えていきましょう。
⑧食に興味がない
そもそも食に興味がない、という子もクラスに1人くらいはいるのではないでしょうか。そういう子は、最低限必要な栄養摂取ができていれば、あとはその子の意思にゆだねてみるのも1つの方法かもしれません。本当に必要なら体が栄養を欲して食欲が出てきますし、友だちが給食を食べている姿を見て「食べよう!」と思うかもしれません。このパターンでは給食の時間だけで考えるのではなく、体を動かす活動を増やしておなかをすかせたり、食育の一環として栄養の話をしたりクッキングをしたりして食に興味を持てるようにしたりするといいかもしれません。
⑨偏食
ただの好き嫌いではなく、特定の食感や味がどうしても苦手という子もいます。大人でも、例えばパクチーやくさやなどのにおいや風味、魚卵の食感が苦手という方もいます。大人は苦手なものは避けられるのに、子どもには「頑張って食べなさい」というのも違いますよね。好みは年齢と共に変化していくことも少なくないです。「今、これを食べることが本当に必要なのか」をしっかり考えたいところですね。どうしても食べてほしい場合は、細かく刻んだり、より味やにおいが強い食材に混ぜてたりして、苦手な部分を感じないようにしてみるといいですよ。それでも食べられないなら、その子にとって本当に苦手なものだということです。
以上、子どもが給食を食べない理由と対処法を考えてみました。
本当は、好き嫌いなくなんでももりもり食べてくれたら一番いいのですが、現実はそうもいかないこともよくありますよね。まずは「どうしたら食べてくれるかな…」と考え実行してみることも大切です。それでもうまくいかない時は「本当に今給食を全部食べないといけないのか」という『大人の当たり前』を見つめ直すことも大切かと思います。もちろん栄養不足になるくらい食べない場合は対策が必要です。しかし、「苦手なニンジンを食べない」くらいだったら、他のもので栄養を賄えば大きな問題はありません。成長と共に好みも変わることもあります。今無理矢理食べさせることで「給食=いやなもの」とイメージがついてしまうことの方が後々大きなダメージになるかもしれません。それよりも、「給食って楽しいね」という経験を重ね、少しずつ給食への意欲を育てていく方がなんだかステキじゃないですか?
それぞれの園や家庭の方針があるので一概には言えませんが、子どもも大人も「楽しく」「楽に」給食の時間を過ごしていけたらいいですね。